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ヒトは費用から投資へ

最終更新日:2025/03/13

 昔の話で恐縮ですが、私が現役時代の頃は製造コストを下げようとすると、最初に作り方や材料費を再検討し、次にその他経費の圧縮を図り、最後にはどうしても人件費の見直しを行わざるを得ませんでした。つまり人件費も「費用」と言う考え方で、その結果業務をアウトソーシングしたり、派遣を増やし、パートなどの非正規雇用の方々も多く増えました。

 しかし最近はヒトに対しては「投資」であると言われています。ヒトは人的資源としての「投資」であり、企業価値を高めて行くための大事な資本であると言う考え方です。岸田内閣の時に「新しい資本主義」と言う政策の中にもその事がテーマとして謳われておりました。どうしても「費用」と考えると減らしたくなりますが「投資」と考えると増やす・育てると言う様なイメージになりますので、いずれにしても良い事だと思います。

 「投資」と言うと設備機械などの場合は、購入した後は稼働率を上げて費用を回収する事を考えますが、こちらは生身のヒトですから、回収(成長した人材)出来る様になるまでには、教育などその先も継続的に「投資」が必要です。しかし現状の企業内教育で言うと、一般的にOJTには割と熱心に取り組んでいるものの、それ以外はどちらかと言うと個人に任せた自己啓発的なものが多い様に思います。リスキリングと言われても、それは個人が将来を目指し考えるものと言うイメージさえ持ってしまいます。

 しかしこれからの企業内教育をヒトへの「投資」と考えると、例えば効果的な学習比率としてロミンガーの「70:20:10の法則」では70%は業務経験、20%は上司や他者からの学び、10%は研修であると言われている様に、今までのOJT中心だけでは無く、OFF-JTを始め、学びの機会やプログラムをもっと広範囲に充実・発展させて社員に提供する必要があるのではないでしょうか。

 企業経営の中で「ヒトは費用から投資へ」と考え方を変換する事が何よりも優先したい課題の1つと思います。

(大髙 勝)